スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告
----------
わたしは妊婦
 「どうせ君は幸せなんだろ」、そう言われたことが何度か私にはある。いい大学、いい会社に入る、いい人生というレールに乗った一生を各駅停車で脱線もすることなく、私は進んでいった。ただそれは外から見た世界であって、中から見ると苦しさに満ち溢れている。私には少なくとも、できちゃった結婚した若いカップルの方が何倍も幸せに見えてしまう。
 
 妊婦さんもきっと同じだ。幸せの絶頂にあり、これからかわいい子供を産み、楽しい生活が待っていると思われがちだ。これもまた外からの視点と、妊婦の立場では全く違う。妊婦=幸せというのは勝手に当事者以外が決めつけた幻想なのだ。
 
 本書は妊娠三か月の妊婦の一人称小説だ。主人公のゆり子は夫の自分に対する気づかい、そして描いている理想に困惑している。一方夫は妊婦の妻を気づかう自分に自己陶酔している。そして家族思いだと褒められたくてしょうがない。
 
 著者は兄弟ユニットの大森兄弟だ。綿矢りさ、山崎ナオコーラら有名作家を輩出した文藝賞を2009年に「犬はいつも足元にいて」で受賞しデビューを果たした。ちなみに受賞作は芥川賞の候補にもなったが、石原慎太郎からは二人で書いていることに対して論外というコメントが。

 この作品に関しては小島慶子さん、斎藤美奈子さんら女性の視点からの立場での書評が多く見られる。そのほとんどが本書に対する肯定的な意見だ。一方でこの作品を男性の立場で見ると辛いものがある。男という動物が、勝手に思い描いている理想の夫像にできるだけ近づこうと奮闘するほど、妻の夫に対する嫌悪感が強くなることを叩き付けられる。これを男性作家が書いているというのがまた面白い。

小島慶子さんの書評はこちらから
斎藤美奈子さんの書評はこちらから
 
 女性は大人になってから、名前で呼ばれることが少なくなる。誰々の奥さん、誰々ちゃんママと呼ばれる。名前を失くした状態で人生の大半を過ごすことが多いのかもしれない。しかしながら、誰かの夫や母親である前に、名前を、自我を持った一人の人間なのだ。そのことは男性も女性も何も変わらない。名前を失いたくないのだ、全員ではないかもしれないがそういう人もきっといる。
 
 本書は身近に妊婦がいる人全員に読んでいただきたい。取り分けそろそろ子供が欲しいなと思っている男性に読んでほしい、そして私のように叩き付けられてほしい。


大森兄弟が出演した「小島慶子のオールナイトニッポンGold」のPodcastはこちらから

スポンサーサイト
別窓 | 本読んじゃった | コメント:0 | トラックバック:0
201307022256
<<第149回芥川賞・直木賞候補作発表!! | 本を肴に酒を飲む | 2013年6月に読んだ本>>
この記事のコメント:
COMMENT
コメントの投稿

管理者だけに閲覧

この記事のトラックバック:
トラックバック URL

FC2ブログユーザー専用トラックバック URL


TRACKBACK
| 本を肴に酒を飲む |
copyright © 2006 本を肴に酒を飲む all rights reserved. template by [ALT -DESIGN@clip].
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。