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返ってきた野口英世
 幼稚園の年長の冬から小学校五年生の冬まで、父親の仕事の関係でアメリカで暮らしていた。そこでは移動手段として自転車は全く考えられず、免許を持てる年齢になるまでは、どこにいくにも親の送り迎えが必要だった。
 日本に帰ってきて、自転車に乗ることができなかった私は、自転車で公園に向かう友人たちを必死に走って追いかけた。乗れるようになったのは、日本に帰ってきて初めて迎える夏だった。いつもの放課後の野球の時間を私の自転車の練習に使ってくれた。
 
 もともと運動神経が悪くなかったからか、二日間合計五時間ほどの練習でほぼ完璧に乗れるようになった。この五時間の中に、多くの子供たちが経験する「手絶対話さないでよ」、「止まらない。止まらない」、「乗れた!乗れた!」が凝縮されていた。どんなに長く自転車に乗っていなくてもこの感覚を忘れないのは不思議だ。
 
 友人の自転車を練習用に使って、乗れるようになり、ようやく自分のマイ自転車を買うときがきた。親は自転車を買ってくれることはなく、私は頑張ってためたお小遣いの中から支払うことに。当時お小遣いが年齢×100円だった私にとって、9000円の自転車は大金だった。
 財布の中から野口英世の束を取り出し、一枚ずつ数えてお店の人に渡した。個人経営の小さな自転車屋のおばあちゃんはお札を九枚数えると、
「頑張って貯めてえらいね」
 そう言って野口英世ちゃんを一枚返してくれた。
 
 十年以上たった今でもこの瞬間を覚えている。嬉しかった。親が福沢諭吉先生で支払っていたら、こんな経験は後にも先にも無かったと思う。おばあちゃんにも、小遣いを試させた親にも感謝している。
 その自転車屋さんがまだ営業しているのか、潰れているのかわからない。あんな経験をさせてくれるチェーン店はないと思う。続いていてくれたら、同じ経験を今の子供たちに与えてくれていたらと思う。

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201307310040
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