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東京ゲストハウス
 お盆休みの真っただ中、海外旅行に行くために、ウキウキしている人たちに囲まれて、出張のためサンフランシスコに向かった。サンフランシスコに向かう飛行機は9時間、積読していた文庫本を何冊が持ち込み、機内で読むことにした。角田光代の「東京ゲストハウス」はそのうちの一冊だ。
 
 私たちはどういった理由で海外に行くだろうか。仕事か旅行がその代表的な例だろう。仕事の目的は明確だ。ビジネスとして利益につながる行動をするために出張先に向かう。   
 しかしながら旅行の目的は明確そうで、そうとは限らない。訪れる街を事前に行き先を決め、がっつりと観光を楽しむ場合もあれば、目的もなくふらふらする場合もある。ただ単に母国に置いてきたいろんなしがらみ、仕事、嫌なことから逃れるために国外に逃亡する場合もある。
 連絡を絶ち、海外に出た瞬間に多くの日本人は、会社だったり、家族だったり、地域のコミュニティから外れた個人になる。どこどこ株式会社の「だれだれ」ではなく「だれだれ」そのものだ。
 
 主人公のアキオは半年間の放浪旅行に出かける。帰ったら何か決まっている仕事はなく、あてもない。「働く」という現実から逃げていたのかもしれない。仕事がないという現実に加えて恋人には別の男ができていた。成田空港から市内に行くお金もない彼は放浪中に出会った暮林さんに頼ることにした。
 暮林さんは東京の端っこにあるボロい木造の平屋で暮らしている。そこには電灯の光に吸い寄せられるように集まる虫のように、同じように社会から逃れる人たちが集まる。その平屋はゲストハウスでもあるし、社会と旅先の中間地点のような場所でもある。アキオを含めてここに住む人の多くは「このままではいけない」とは心のどこかで思っている。
 
 ここで登場するのが偉そうなおっさんだ。このおっさんは妙に旅慣れていて、自分以外の他者の旅を否定する。「なんでネパールいって、チベットもインドもいかずに帰ってくるかなあ」などいつも上から目線で、王様と名付けられる。あくまで旅に関しての否定だが、人生を否定されているかのようでもある。
 社会に対して正面からぶつかると、なかなか思いどおりにいかない。その現実をつきつけられているかのようで、ゲストハウスの住人は王様を煙たがる。そしてとうとう暮林さんはゲストハウスを捨てて、どこかに逃げていく。
  この物語は王様の存在なかったら、ただの海外から帰ってきた人が集合住宅で共同生活して、セックスして、モヤモヤしてというだけのものになる。それだけでも読みごたえがある文を提供してくれるけれど、王様がいることで物語に張りを持たせる。
 
 出張先で仕事をしているからか、あんまり現実から逃避できていないが、確実に日本にいるよりも個人としての時間を過ごしている。帰ってきたら何かが変わっているのだろうか。現実がどう変わっているか心配だ。彼女はまだ家にいるだろうか、いやもともと彼女なんていなかった。お勧めです。


  
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201309012253
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