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初恋温泉
 「温泉旅行に行こう」私が小さい頃、父か母がそう言ったのを覚えている。当時私は家族で旅行に行くことは好きだったが、温泉旅行には反対だった。まず何よりもお風呂に入ることが嫌いだった。100数えるまでお風呂から上がっちゃダメとか拷問のようだった。
 そして何よりもわざわざ遠くまでいって、温泉に行く意味がわからなかった。お風呂に入るのなら家のお風呂か、足を伸ばしいってもまだまだスペースがある近くの銭湯に行けばいいと思っていた。
 
 ただ24歳現在、温泉旅行に行きたいという気持ちが年を重ねるにつれて膨張していった。小さい頃にお風呂が嫌いという気持ちは消え去り、湯船にのんびりと浸かっているのは気持ちいい。
 そして“温泉旅行”は旅行に行く最も手軽な理由となる。お風呂が嫌いでない限り、温泉旅行を断る理由はない。旅行に行くというよりも、好きな人とどこかで一泊したい、そして“したい”という希望を叶えるものでもある。
 
 本書は温泉を舞台に5組の男女が描かれる短編集だ。著者は「悪人」、「さよなら渓谷」など長編の多くが映画化されている吉田修一さん。「日曜日たち」のような連作短編集も得意とする。
 日常を離れて旅行に出ると、日ごろの仕事や人間関係などと鬱陶しさから脱出し、リラックスすることができる。それゆえに、普段は気づかない他人の一面に気づくとともに、その人の本当の気持ちがわかる。各短編できめ細やかな心情を著者は優しく、でも確かにすくいあげてくれる。
 
 「純情温泉」では高校生カップルの健二と真希が、親に内緒で初めて外泊する。健二の目的は“する”ことそのものだ。「何、言ってんだよ。温泉に浸かるだけで男は一万も二万も出しませんって」と真希に語る。
 貸し切り温泉で何も着ていない二人は、浮気が原因で離婚する兄夫婦の話を通して、自分の気持ちを素直にさらけ出す。「俺、絶対に浮気なんかしないと思うよ」、「いや、でもこれ冗談じゃなくて、おまえ以外の誰かと温泉に来たとして、今日みたいに楽しいとは思えないんだよな」。
 
 まだ汚れの無い、一人の女性を愛する純情な気持ちがゆっくりとした会話で語られる。本当に「好き」っていう気持ちが文章を通して伝わってくるとともに、そう長くは続かないぞ、と思ってしまう私もいる。派手なストーリー展開はないものの、読んでよかったと思わせる短編が詰まっているのでぜひ。
 

 
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201309041116
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