スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告
----------
地獄でなぜ悪い
 この世の中はたくさんのコンテンツに溢れている。本は年々売上が下がっているにも関わらず、出版点数が増えている。何を基準に選べばいいかわからないから、とりあえず有名な作家の作品を選びがちだ。
 映画も同じで、一年間で超大作からマイナー作品まで腐るほど映画が完成され、劇場で披露されている。おまけに予告編はどれもこれも面白い(予告編を作る専門の会社がある)。こちらもとりあえず、好きな俳優が出演しているという基準で選択している人もいるのではないだろうか?ただ映画の場合もう一つ選択する基準がある。映画の監督だ。
 私の場合は「ゆれる」、「ディアドクター」の西川美和監督、そして今回紹介する「地獄でなぜ悪い」の園子温監督の映画は欠かさず観るようにしている。同じ映画監督の作品を観ることによって、共通して出てくる俳優やテーマ、また新たな取り組みに気づくこともある。少し異なったベクトルで映画を楽しむことができるのでお勧めだ。
 
 さて「地獄でなぜ悪い」だが、奇しくもカンヌ国際映画祭コンペティション部門で審査員賞を受賞した「そして父になる」と同じ9月28日に公開となった。実写の作品では今年一番の話題作とぶつかるとは何たる不運。「そして父になる」が太陽としたら、「地獄でなぜ悪い」は月だ。公開している劇場の数も大きく違う。
 ただ「地獄でなぜ悪い」も負けていない。第70回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門で公式上映され、7分間のスタンディングオーベーションを送られた。加えて第38回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門観客賞を受賞している。
 「園子温の監督を観ている人はただのサブカル好き」と罵る人もいる。ただそんな人たちに言いたい。鬼才と呼ばれている園子温監督は国内外で評価が年々高まっており、「鬼才」から孵化し「天才」になっている。もちろん作品が苦手な人もいるが、多くの熱狂的なファンがいる。「愛のむきだし」、「ヒミズ」、「恋の罪」、「ヒミズ」などの作品国内外で多くの賞を受賞している。ファンは胸をはって「園子温監督が好きだ」と言っていい!
 
 ヤクザの組長・武藤(國村隼)は獄中にいる妻・しずえ(友近)のために本業そっちのけで、娘・ミツコ(二階堂ふみ)を主演にした映画の製作を試みている。しずえにとって、元子役CMタレントの娘が映画で活躍していることを「希望」に獄中生活を送っているからだ。
 武藤はミツコから(嘘だが)映画監督と紹介された男・公次(星野源)を監督に抜擢し、機材も用意して本格的に撮影準備を始める。映画を撮れないと殺される公次はなんとか映画監督のフリを続けたが、ついには逃げ出してしまう。そんなのときに表れた救世主が映画監督を夢見る平田(長谷川博己)だ。
 平田は武藤と敵対するヤクザ組織の組長であり、ミツコに対して以上な愛情を抱く池上(堤真一)に協力を要請する。ホンモノのヤクザの抗争を舞台にした、スタッフ・キャスト全てがヤクザの映画がついにクランクインする……。
 
 この映画監督を夢見る平田は、園子温監督そのものだ。監督自身も初めは自分を投影させるつもりはなかったが、自然とそうなってしまったと語っている。「俺は、将来、永遠に刻まれる一本を撮る。それを撮れたら死んでもいい!」、「俺は金のために映画なんて作る気はない。そんなことをするのは、日本映画を悪くするバカどもだ!」というセリフがある。
 これらのような商業映画を呪う言葉たちは、園子温監督がまだ30、40歳にして芽が出ていない頃に思っていたことが投影されている。また劇中で平田たちが8mmカメラを手に公園で撮影をしていると、子供に馬鹿にされるシーンがある。これも園子温監督が実際に体験したことを、そのまま本作品の中で引用している。
 
 キャストについては、前述したメインキャスト以外の人たちにも凝っている。「恋の罪」の主人公であり、園子温監督の妻である神楽坂恵が武藤の愛人として、「ヒミズ」などに出演した渡辺哲が二つの組の捜査を担当する刑事として。また「冷たい熱帯魚」で圧倒的な殺し屋を演じたでんでんが中華料理屋の店主としてちょこっと出てくる遊び心もある。
 また園子温監督が金曜日にレギュラー出演している関東ローカル番組「ニッポンダンディ」において共に出演する水道橋博士、映画評論家・ライターの高橋ヨシキさんも端役として出演している。
 個人的に驚いたキャストは、平田が口説く行きつけの居酒屋にいる女の成海璃子だ。個人的には成海璃子は幼い印象があったのだが、実に大人っぽく、セックスの香りが溢れていた。園子温監督はアダルトビデオの監督も経験したこともあるだけに、女性を美しく撮ることにも長けている。
 
 その他にも映画に対する愛が溢れた細かな仕掛けがあちこちに散りばめられている。フィルムからデジタルへの変化、ヤクザ映画で有名な深作欣二のオマージュなどあちこちある。
 ネタバレになるから詳細は述べないが、私が一番驚いたシーンはラストのラストだ。あんな終わり方観たことないし、「これってアリなの!?」っていう気持ちだ。賛否両論だと思う。個人的には映画と現実が地続きであることを感じさせてくれる思い切った演出だと思う。
 本作品は園子温監督の映画に対する思いが溢れんばかりに詰まった作品だ。2013年に公開された映画の中では圧倒的にナンバー1だ。こんな映画はなかなか観ることができない。ぜひ多くの人に観てほしい。


 
スポンサーサイト
別窓 | 映画観ちゃった | コメント:0 | トラックバック:0
201310141719
<<東京にしがみつく人たち 「花咲さんの就活日記」 | 本を肴に酒を飲む | 自衛隊の音楽隊っている?>>
この記事のコメント:
COMMENT
コメントの投稿

管理者だけに閲覧

この記事のトラックバック:
トラックバック URL

FC2ブログユーザー専用トラックバック URL


TRACKBACK
| 本を肴に酒を飲む |
copyright © 2006 本を肴に酒を飲む all rights reserved. template by [ALT -DESIGN@clip].
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。